あのころの俺はどこへいった

夏休み

親に連れて行ってもらった、大型プール施設

そこには、子供用のジャングルジム

水に浮かんだ島を姉と一緒に飛び跳ねる

カモシカのような跳躍力、そして柔らかさ

その動きは動物、人間じゃない

感情が先へ先へと走り出す

笑いながら走り回る

 

気づいたら

見知らぬ家族と遊んでいた

姉と弟の、うちと同じ構成の家族

「友達になろうよ」という言葉などなく

意識の隙間から入ってきて、

知らぬ間に一つになってた

それは、遊ぶための手足が増えた感覚

これなら、どんな遊びだってできそうだ

さっき会ったばかりの兄弟と暴力的な遊びを、時間も忘れて楽しんだ

 

あの頃の俺はどこへいった

今じゃ、意識の隙間から入られることなんてない

がっちりと身を守ってる

通行許可証を発行するまで、相手は俺の中へは入れない

 

別れ際

もう空が赤い、帰る時間

今日出会っただけの関係。離れれば、もう二度と会えない

連絡先を交換するっていう発想はない

あまりにもぴったりと二つの兄弟が一つになっていたから、また会えるって思っていたのさ

だから、また明日と言いそうな顔で、さよならと言った

二度と会うことのない人たちは夕日に消え、白くなっていった

 

あの頃の俺はどこへいった

今は、家にこもりっきりで、知識ばかり増えていく

経験の流れている川へは行かなくなった

あの頃は、経験しかなかった

だから、言葉にできなかった

今は、言葉が多くなりすぎた

今の俺は、あの頃の経験を食って生きている

 

 

昔を懐かしむのはやめよう

あの時一つになった兄弟を探しに行こう

目があった瞬間、思い出せるはず

一度一つになった心は、その喜びを忘れはしない

ジープにでも乗って探しに行こう

どんな道のりも乗り越えられるらしいから

 

おわり