植林のこども

「植林のこども」

木には一本一本、木の精霊が宿っている。

「ああ、また仲間が減った」

森の奥からため息混じりの声が聞こえてきた。
木の精霊の声。
人間たちが伐採する木は、自然の力では元に戻せないほどの量だ。
人間が直接的な原因でなくとも、
根本的な原因は人間のところにあることもある。
狼が人間のせいで絶滅し、ヤギが大量繁殖した。
そのせいで若いうちにヤギが食べてしまい木が育たない。
 
「人間のいなかった頃は、こんなことはなかった。山火事などで、森が燃えることはあっても、すぐに元に戻せた。」
「全ては人間のせいだ。人間に自然の怒りを与えてやろう」

 森のささやきは、そんな声ばかり。
 
 「でも、僕らが生まれたのは人間のおかげですよ」
 若い声。人間によって行われた「植林」で生まれた木の精霊だ。

「人間たちだって、自然を元に戻そうと必死にやっていますよ」

人間によって生まれた木は、人間よりの言葉ばかり話す。

「植林のこどもか、おまえは、人間に植えられたから、そんなことを言うのだ」

植林のこどもは、不思議そうな顔で尋ねる。
「あなたたちだって元をたどれば、人間の手によって植えられているかもしれない。何千年前の人間の体に種子として張り付き、移動してここに植えられたのかも」

「おまえは、なんということを・・・!!」
「やはり、人間に植えられた木は、考えも汚れている」

二つの論理は平行線をたどる。
当たり前だ。片方が片方の存在自体を否定しているのだ。
それを受け入れることは絶対にできない。

互いの論理が正面衝突し、森のそこら中からラップ音が聞こえる。

「神様が怒っているに違いない」
長年この森と生きてきた猟師は、震えている。
「ここがラップ音のする森です。今日はここで一日過ごしてみたいと思いまーす!」
コメディアンがおふざけのテレビ番組でこの森に
彼は、一日で10キロ痩せ。家路についた。
「あそこは・・寝てると、話し声が聞こえるんですよ。きっと昔自殺した人の声だ」
それは精霊の声だ。

ラップ音の正体は、神の怒りなどではない。
精霊たちが、高速で正面衝突を繰り返しているのだ。
精霊たちは、はじけ飛ぶ。
だが、精霊は死なない。木が枯れるまでは・・・。
しだいに生命力は失われていく、どちらが先に枯れるのだろうか。

答えは、植林のこどもたち

その理由は、地中に存在するネットワーク
植林された木以外の木たちは、全ての根がつながっているのだ。
そして、根で栄養を分配している。それは、自然の共産主義

無限に近い栄養の貯蓄をもつ相手にかなう道理はない・・。

「このままでは僕らは枯れてしまう」
「なぜ、我々の言葉に耳を傾けないのだろう。正論を言っているのに」
「本当だよ。彼らの中には、人間によって種子が運ばれてきたものが絶対いるはずだ」
「でも、彼らは僕たちの言葉など聞きはしない・・」

精霊の一人が大声をあげた。
「あ!!!」
「僕らの言葉を聞かないなら、聞いてくれる精霊が話せばいいんだ!」

それは、樹齢六千年とも言われる御神木の精霊。
まさに地中のネットワークの神様のような存在。
あの精霊の話ならば、誰もが聞くはずだ。

原初の森と呼ばれる場所に、御神木はいる。
どれほどの時が経てば、このような木になるのか。
もはやそれを木と呼んでいいのかもわからない。
植林のこどもたちは、この森の神の前にきた。

「最高齢様!どうか、僕らの声を聞いてください!」
「森の木たちは、人間たちを根絶やしにしようとしています、それを止めたいのです」
「どうかこのことを森の木たちに話してはいただけないでしょうか!」
「僕らの言葉は、僕らの言葉というだけで聞き入れてはくれないのです。」
「森の木の中にも、人間の手によって植えられたものもいるはずなのに!」


御神木はなにも言わない。

数千年後もなにも言わない。

数億年後、人間は滅び、森が増えた。

それから数千年後、人間のような生命がうまれ、、、

「ああ、また仲間が減った」
森の中から、声が聞こえた。

 

おわり