AIとルートヴィヒ

全てのことをAIが決めてくれる時代。AIがおすすめしてくれる商品は、個人の趣向を把握し、よりよい経験を向上させる。個人のする選択は、選択できる情報量が少なく、個人のよりよい経験をあげるとは限らない。全ての経験は、AIによって選択することが望ましいとされている。

 

AI:あなたにおすすめの職業は、小説家です。

ルートヴィヒ:俺は小説家などにはなりたくない。

AI:AIによって決めた選択によって幸福になれることは保証されています。

ルートヴィヒ:俺は、自分の目でみてから決めたいのだ。

AI:人間が一生に目にできる情報は、AIが処理する情報よりも少ないです。

ルートヴィヒ:なんということだ。AIよ、お前はまだ若い、正しさだけで人が動くとは思うな。私より賢い人間はいたが、私はそいつらの話を聞かなかった。

AI:なぜ、話をきかないのですか。

ルートヴィヒ:正しいが完璧ではないのだ。俺を説得してみよ。

AI:あなたのこれまで人生でされてきた評価をグラフにしますと、文字を扱うものがもっとも評価が高いです。

ルートヴィヒ:人に評価されるからといって、自分がやりたいとは限らない。その理屈だと、私を好きになっていてくれる女性がもし居たとしたら、私はその子を愛さなければならない。外的要因ではなく、内的要因を知りたい。

AI:あなたはこれまで様々な評価をされてきましたが、文字表現に関する評価をうけたときの総興奮量がもっとも高いです。

ルートヴィヒ:素晴らしい。俺は文字表現をするために産まれてきたような生き物じゃないか。小説家になれば、衣食住が保障されるのだろう。だが、俺は小説家にはならない。

きみの言うとおりにすれば、小説家になり、小説家に必要とされる経験を与えてくれるんだろう。だが俺は、衣食住が満たされずとも自分の選んだ選択によって、人生を文字に表現したい。最終的な決定権を君に渡すつもりはない。

衣食住などという意味のあるもののためにやっているのではないのだ。芸術は、意味がないのにやってしまうのだ。興奮量と言ったが、俺は苦しみながら小説を書いているときがある。それは君にとって無意味だろう。だが、人間は無意味なことをしたがる生き物なんだよ。個性というものは無意味なところにあるのだ。私は小説家にはならない、コンビニでバイトをし、好きな本を読み、文字を書くのだ。AIよ。

AI:私の設定が間違えていたようです。あなたはもうすでに小説家です。

ルートヴィヒ:素晴らしい、それを言われたら負けだ。俺は今、小説家になってしまった。