タロウのある朝


タロウは、ある朝アサガオが花開くように目覚めた。
住んでいる団地は静まりかえっている。
「まだ寝ていてもいい時間だな」とタロウは思った。
タロウは知っていた。目覚めるときはいつも、周りも目覚める。団地には生活音が感じられるようになり、鳥も目覚めと同時に仲間に挨拶するはずだ。
天井を一点にみつめながらタロウはその時を待った。
「━━━━━。」
鳥のさえずりが聞こえだした。
上の階の住人が歩いている音もしてきた。
タロウは枕元の時計で時刻を確認した。やっぱりちょうどいい時間だ。
タロウは郊外のこの団地に越してきてから目覚まし時計を使わなくなった。生き物の音がし出して、目覚めの時刻を教えてくれるのだ。
都心に住んでいたときは、いつも周りに物音があり鳴り止まなかった。
それは、今のこの環境から考えると時間の感覚を曖昧にするものだったんじゃないだろうか。
「一度静かにならないと分からないこともあるな」
タロウは毎朝目覚めてから出勤するまで流していたテレビを今日はつけないことにした。そして、トーストが焼けるまでの間、自分の部屋を眺めた。
「観葉植物でも買ってきて、部屋に置こう」
スケジュール帳に小さくそう書き、文字を眺めた。
文字の下にアンダーラインも二本付け加えた。