「マッドマックス 怒りのデスロード」評論~マズローの五段階欲求~(ネタバレあり)  

f:id:ningen2:20191014212237j:plain

www.youtube.com

~あらすじ~

 

核戦争後の荒廃した世界で、地下水の豊かな土地があり、イモータルジョーという男が独裁的なコロニーを形成していた。

そんなコロニーの中の部隊を指揮するフェリオサがジョーを裏切り、ジョーの女とともに「緑の地」を目指し、逃亡する。

ジョーは軍隊を指揮し、これを追いかける。

主人公であるマックスは彼らにとらえられ、血液バンクにされているので(荒廃した世界では血液も重要な資源)、ここにからんでくることになる。

 

マズローの5段階欲求~

f:id:ningen2:20191014212429j:plain



マズローの5段階欲求とは、マズローが5段階のピラミッドで示した人間の欲求です。

満たされると次の欲求へ移行するとされている。

「マッドマックス」は世界が荒廃しており、そんな世界では欲求がわかりやすくあらわれる。そして、マズローの5段階欲求と照らし合わせてみると、人々の欲求の変化がわかりやすい。

 

 1.フュリオサ

 

2.マックス

 

3.ニュークス

 

 1.フュリオサ

フュリオサは、ジョーを裏切り、彼の妻たちをトラックに乗せ「緑の地(グリーンプレイス)」へ向かう。

妻たちは今の環境(ジョーの与える環境)が安全ではないと感じ、フュリオサの話す安全な土地「緑の地(グリーンプレイス)」へ向かうことにする。マズローの5段階欲求の「安全欲求」の階にあたる。

では、フュリオサも同じように「安全欲求」の階なのか?

一見すると、そのように思えるが、フュリオサは安全欲求の段階の、「自己実現」の段階にあると推測される。

あるシーンでフュリオサはマックスの問いに対し、

フュリオサ:彼女たち(ジョーの妻たち)は希望にかけた。

フュリオサ:私は過去を清算する。

 

妻たちは、安全欲求がみたされることに希望をかけ行動しているが、

フュリオサは、妻たちを「緑の地(グリーンプレイス)」へ連れて行き、救うことにがジョーへの復讐と考え、行動している。

これはまさに「自分の能力を最大限に生かしたい」という自分の思いから発生する動きである。

妻たちのなかには安全欲求が満たされない可能性があるとわかると、ジョーのもとへ戻ろうとするものがいたが、フュリオサが導くことで彼女たちも肝が据わっていくごとに、自己実現の領域にそれぞれ達していく。(社会的欲求や、承認欲求は仲間がいることで満たされている)

その中の一人は、「緑の地」で出会ったものが抱えていた種を守ることが自分の使命と感じ、守ろうとする行動をしていた。

最後にはフュリオサのジョーへの復讐は達成され、フュリオサは新たな目的のために生きるのである。

 

 2.マックス

元警官のマックスは、救えなかった命の幻覚に悩まされながら、荒野をかけていた。

マックスはウォーボーイズ(ニュークス)の輸血袋として車につながれ、フュリオサの逃走にからむことになる。

そのなかでマックスは、フュリオサからトラックを奪うことに成功し、トラックにあった水をがぶ飲みする(生理的欲求)

その後、トラックに乗り込み、フュリオサたちを置き去りにして発進しようとする(安全欲求)

だが、トラックはフュリオサの改造により、発進の際にとある順序を踏まなければ発進できない仕様になっており、仕方なくマックスはフュリオサたちと共に「緑の地」へと向かうことになる。その後、マックスはフュリオサたちと共闘し生き延び、「緑の地」のあった場所へ着く。そこには「緑の地」がすでになくなっていたために、フュリオサたちは安全な土地を求めて旅立つことにする。そのときにマックスはフュリオサから「一緒にくるなら歓迎する」と言われるが、マックスは共行こうとしない。

これは、マックスが救えなかった命に罪を感じ、「社会的欲求」や「承認欲求」を我慢することで自分への罰になると考えていたからではないだろうか。

だが、マックスは救えなかった命に罪を感じる男である。そのため、フュリオサたちの旅立った先に安全な場所はないと知っていたため、フュリオサたちを救うため、彼女たちに一時的に手を貸す。フュリオサたちは仲間になったと思ったようだが、マックスは一時的なものと考えていた。それでも、一時的にとはいえ「社会的欲求」や「承認欲求」が満たされることはマックスにとって幸福な時間であったのではないだろうか。

ラストシーンでは、安全な土地を手に入れたフュリオサたちを遠巻きにみつめ、去って行く。これはまたマックスがマックス自身に与えた罰による行動であろう。

 

3.ニュークス

ニュークスは、イモータンジョーを崇拝する「ウォーボーイズ」の一人である。

ウォーボーイズは元々、汚染によって短い命であり、その命に意味を持たせたいと動いている。ジョーはそんなウォーボーイズに、自らのために動けば「価値ある存在」だと教える。そのため、ジョーのためならば死にすら飛び込む。

死ぬことが恐ろしくない人間はいない。きっとウォーボーイズは目の前の恐ろしい死を忘れ去るために、あえて死に飛び込むのではないだろうか。

ニュークスは、「生理的欲求」や「安全欲求」などを忘れ去るように教えられている。

それはジョーの二つのセリフからみてとれる。

「水を求めるな、禁断症状で、生ける屍となるぞ」(人々にジョーが水を与える冒頭シーン)

「お前の魂は、英雄の館へ 俺が運んでやる」(妻の奪還に際し、ニュークスに語りかける)

「社会的欲求」は、ウォーボーイズにいることで満たされるので、

ニュークスを含めるウォーボーイズは「承認欲求」を持っている。(命をかけるときにウォーボーイズは「おれをみろ」と叫ぶ)

そんなウォーボーイズの一人ニュークスも、ジョーのためにフュリオサを追う。その中でジョー本人から妻たち奪還に際し「」と承認欲求を満たす機会を得る。だが、ニュークスは失敗し、ジョーから失望される。さらにはジョーの妻が死に、ニュークスは絶望する。彼は唯一の生きる目的であった欲求が満たされないことを感じてしまったのである。そんなとき、妻の一人がニュークスをみつけ、彼に仕事を与える。

ニュークスは満たされないと絶望した承認欲求が、ふたたび満たされる可能性を感じ、すべてをささげる。彼はラストシーンで「おれをみろ」と言うが、それは今までのようにジョーや仲間に向けたものではなく、自分をみつけてくれた女にたいして言った言葉であった。

 

 

~まとめ~

「マッドマックス 怒りのデスロード」は、ストーリーがシンプルで、それぞれの望みが全て物語の一点に集中しながら進んでいく。それがすさまじいエネルギーの凝縮としてみえるので、熱量のある作品にしあがっている。

今回挙げなかったキャラクターたちもそれぞれの欲求をもっており、それがきちんと描かれている。これはまぎれもない傑作である。